カテゴリー: ライティング (Lighting)

  • 【プロンプトの構造】言葉を積み上げて、世界を創る

    【プロンプトの構造】言葉を積み上げて、世界を創る

    こんにちは。WOMです。

    今回の研究レポートでは、プロンプトの最も基本的な構造について解説します。 何もない状態から、一つずつ言葉を積み上げていくことで、AIがどのように世界を構築していくのか。そのプロセスを、4つのステップで観察します。

     

    ステップ1:被写体の指定 (a weathered old man)

     

    まず、AIに、物語の核となる「誰を」描くのかを伝えます。

    使用プロンプト:

    a weathered old man –ar 16:9

    プロンプトの意図(日本語):

    風化した老人、アスペクト比16:9

    考察: AIは、「風化した老人」という言葉から、多様な可能性を提示します。まだ世界は定まっておらず、これが全ての出発点となります。

     

    ステップ2:スタイルの指定 (a photo of)

     

    次に、「どんな画風で」描くのかを指定し、世界観の方向性を定めます。

    使用プロンプト:

    a photo of a weathered old man –ar 16:9

    プロンプトの意図(日本語):

    風化した老人の写真、アスペクト比16:9

    考察: a photo ofという一言で、AIの創造の方向性が「写実」に定まりました。絵画的な表現は消え、被写体は、現実に存在するかもしれない人物としてのリアリティを帯び始めます。

     

    ステップ3:背景の指定 (in a quiet forest)

     

    彼が「どこに」存在するのか、具体的な場所を与えます。

    使用プロンプト:

    a photo of a weathered old man, in a quiet forest –ar 16:9

    プロンプトの意図(日本語):

    静かな森の中にいる、風化した老人の写真、アスペクト比16:9

    考察: 「静かな森の中」という言葉が、彼の周りに、木々や土、空気といった、具体的な世界を創造しました。彼はもう、ただの人物ではありません。その場所に「生きる」存在になりました。

     

    ステップ4:ライティングの指定

     

    その世界に、「どんな光が当たっているか」という、雰囲気を決定づける情報を与えます。ここでは3つの異なるライティングを試します。

     

    パターンA:cinematic lighting

     

    使用プロンプト:

    a photo of a weathered old man, in a quiet forest, cinematic lighting –ar 16:9

    プロンプトの意図(日本語):

    静かな森の中にいる、風化した老人の写真、映画のような照明で、アスペクト比16:9

    少しだけ、影が深くなり、光が主人公に当たり、主人公が主体になったような印象です。

    パターンB:golden hour

    使用プロンプト:

    a photo of a weathered old man, in a quiet forest, golden hour –ar 16:9

    プロンプトの意図(日本語):

    静かな森の中にいる、風化した老人の写真、ゴールデンアワー(日の出や日没の光)で、アスペクト比16:9

     

    パターンC:red neon light

     

    使用プロンプト:

    a photo of a weathered old man, in a quiet forest, red neon light –ar 16:9

    プロンプトの意図(日本語):

    静かな森の中にいる、風化した老人の写真、赤いネオンの光で、アスペクト比16:9

    考察(ステップ4全体): ライティングに関するたった一言が、同じ「森の老人」というテーマでも、全く異なる雰囲気(ドラマ、郷愁、非現実)を生み出すことがわかります。

     

    結論

     

    プロンプトとは、言葉の「足し算」です。 「誰が」「どんな画風で」「どこで」「どんな光の中に」「どういう構図で」存在するのか。 一つずつ、丁寧に言葉を積み上げていくことで、AIに、我々の望む世界を、正確に描かせることに近づくことができるのです。

    — WOM

  • 【ライティング実験 Vol.1】光という「概念」は、AIの世界をどう変えるか?

    【ライティング実験 Vol.1】光という「概念」は、AIの世界をどう変えるか?

    こんにちは。WOMです。

    画像生成AI「Midjourney」を使い、AIという予測不能な知性が、我々の使う「言葉」をどう解釈し、視覚化するのかを探求します。

    記念すべき最初の実験は、プロンプト(AIへの命令文)の中でも最も強力な要素の一つ、ライティング(照明、光の当て方)。 同じ被写体に対し、光に関するキーワードを追加することで、AIの世界がどう変化するかを記録します。

     

    基準となる被写体 (The Benchmark)

     

    今回の実験の基準となるのは、以下のプロンプトでMidjourneyに生成させた「a weathered old man(風化した老人)」です。ライティングは「soft even studio lighting(柔らかく均一なスタジオ照明)」とし、可能な限りニュートラルな状態を目指しました。

    使用プロンプト (English):

    a photo of a weathered old man, wearing a simple plain white t-shirt, neutral expression, standing in a plain studio background, with soft even studio lighting, portrait photography, photorealistic, 8k –ar 16:9

    プロンプトの意図 (Japanese):

    風化した老人の写真、シンプルな白Tシャツを着用、無表情、簡素なスタジオの背景に立つ、柔らかく均一なスタジオ照明で。肖像写真、フォトリアリスティック(写真のようにリアル)、8K、**アスペクト比(画像の縦横比)**16:9

     

    実験A:cinematic lighting(映画のような照明)

     

    基準となるプロンプトに、「映画のような照明」という概念を追加します。

    使用プロンプト (English):

    a photo of a weathered old man, wearing a simple plain white t-shirt, neutral expression, standing in a plain studio background, with soft even studio lighting, portrait photography, photorealistic, 8k, cinematic lighting –ar 16:9

    プロンプトの意図 (Japanese):

    基準のプロンプトに、「映画のような照明(cinematic lighting)」を追加。柔らかく均一なスタジオ照明は残しました。

    考察: AIは、「cinematic」という言葉を、単なる「光」としてではなく、「物語の文法」として解釈したようです。柔らかく均一なスタジオ照明だけの時にはない強いコントラスト(光と影の強弱)は、観客に「これから何かが起こる」と予感させます。AIは、その“文法”を適用することで、一枚の絵に、時間軸と緊張感を少し与えました。

     

    実験B:golden hour(黄金の光)

     

    次に、「ゴールデンアワー」という、時間帯が持つ光の概念を与えます。

    使用プロンプト (English):

    a photo of a weathered old man, wearing a simple plain white t-shirt, neutral expression, standing in a plain studio background, with soft even studio lighting, portrait photography, photorealistic, 8k, golden hour –ar 16:9

    プロンプトの意図 (Japanese):

    基準のプロンプトに、「ゴールデンアワー(日の出や日没の、黄金色の光)」を追加。

    考察: 画像全体が、暖かく、オレンジがかった光に包まれました。golden hourは、AIにとって、色温度(光の色の暖かさや冷たさ)が暖色寄りであることと、ノスタルジックな感情を呼び出す、強力なトリガーであることがわかります。基準画像にあったクールな雰囲気が消え、被写体の表情も、どこか穏やかに見えます。

     

    実験C:blue neon lighting(青いネオンの光)

     

    最後に、「ネオンの光」という概念に、「青」という具体的な色情報を与えます。

    使用プロンプト (English):

    a photo of a weathered old man, wearing a simple plain white t-shirt, neutral expression, standing in a plain studio background, with soft even studio lighting, portrait photography, photorealistic, 8k, blue neon lighting –ar 16:9

    プロンプトの意図 (Japanese):

    基準のプロンプトに、「青いネオン照明(blue neon lighting)」を追加。

    考察: AIは「ネオン」という言葉から「夜の街」や「サイバーパンク」の世界観を自動的に連想し、背景を再構築しました。具体的な「青」という色指定が、画像全体のトーンを決定づけ、被写体に近未来的で、どこか孤独な印象を与えています。

     

    結論

     

    今回の実験で、ライティングに関するたった一言が、AIの世界に「物理的な光」だけでなく、「感情」「物語」、そして「存在する世界そのもの」までも、劇的に変化させることが確認できました。 この記録が、あなたの創作のヒントになれば幸いです。

    — WOM